2026-10-17
エランセとフィラーの違い――満たしたボリュームを何が維持するのかから見ていきます
エランセとヒアルロン酸フィラーは、どちらも皮膚の下に注入する素材ですが、ボリュームを保つ仕組みが異なります。エランセは、ジェルが吸収される間にコラーゲンが定着するよう促す方式です。







a. エランセは広い意味ではフィラーの一種ですが、一般に「フィラー」と呼ばれるヒアルロン酸フィラーとは、ボリュームが維持される仕組みが異なります。b. ヒアルロン酸フィラーは、注入したジェルそのものがボリュームを満たします。一方エランセは、最初のジェルが吸収される間に、PCLマイクロスフィアの周囲に自身のコラーゲンが定着するよう促します。c. エランセは、ヒアルロン酸フィラーを溶かす酵素(ヒアルロニダーゼ)では分解されません。そのため、しわやくぼみの原因・深さ・皮膚の厚さを先に確認してから、適用の可否を判断します。
執筆 ・ サムスンBNS医院 院長 パク・ソヒョン | 参考:サムスンBNS医院ホームページ「コラーゲン刺激注射」「フィラー」「施術後の注意事項」、学術資料(de Melo ほか、2017 ・ Christen・Vercesi、2020)
こんにちは。サムスンBNS医院の院長、パク・ソヒョンです。
エランセについて調べていらっしゃる方の中には、「エランセもフィラーなのか」というところから気になる方がいらっしゃいます。
エランセもヒアルロン酸フィラーも、どちらも皮膚の下に注入する素材です。違いは、注入した素材そのものがボリュームになるのか、それとも最初のジェルが吸収される間にその場所へ自身のコラーゲンが定着するよう促すのか、という点にあります。この違いによって、経過の見方や治療計画で確認すべき点も変わってきます。

左は加工したヒアルロン酸ジェル、右はCMCジェルにPCLマイクロスフィアが混ざったエランセを表現した説明用の図です。実際の製品や施術材料の見た目ではありません。
本日は、エランセとヒアルロン酸フィラーの違いを仕組みから見ていき、診療でどのような基準で適用の可否を判断しているのかをご説明します。
1. エランセもフィラーなのでしょうか
フィラー(filler)は「満たす物質」という意味です。くぼみやしわが深くなった部位の皮膚の下に注入し、その部分を補う素材を広くフィラーと呼びます。
エランセも皮膚の下に注入する医療機器です。そのため、広く見ればエランセもフィラーに分類されます。
ただ、診療の現場で「フィラー」と言うと、ほとんどの方がヒアルロン酸(HA)フィラーを思い浮かべられます。本日エランセと並べて比較する「フィラー」も、ヒアルロン酸フィラーのことです。
同じ「フィラー」という名称の中でも、満たしたボリュームを保つ仕組みは異なります。
2. ヒアルロン酸フィラーは、ジェルそのものがボリュームになります
ヒアルロン酸はもともと私たちの皮膚の中にある成分で、水分を抱え込む性質があります。フィラーに使われるヒアルロン酸は、体内に長くとどまれるように加工したジェルの形態です。
注入したジェルがくぼんだ部分を直接満たして形を作るため、注入直後から形を確認しながら調整しやすいのが特徴です。その後ジェルは時間の経過とともに体内で少しずつ分解・吸収されます。使用する製品や部位、個人の皮膚の状態などによって持続期間は変わることがあり、必要に応じて追加の施術を検討する場合もあります。
もう一つの特徴は、ヒアルロニダーゼという分解酵素で溶かせる点です。形を調整する必要がある場合や、予期しない反応が生じた場合に対応できる方法があるということです。
ヒアルロン酸フィラーは、注入したジェルがボリュームを作り、そのジェルが時間の経過とともに少しずつ吸収されていきます。
3. エランセは2つの成分が役割を分担しています
エランセは2つの成分で構成されています。CMC(カルボキシメチルセルロース)をベースにしたジェルが体積比で約70%を占め、その中に均一に混ぜ込まれたPCL(ポリカプロラクトン)マイクロスフィアが約30%です。マイクロスフィアは直径25〜50μm程度で、髪の毛の太さよりも細く、表面がなめらかな球状です。
役割 01 / 02 ・ CMCジェル(CARRIER GEL)
注入直後にボリュームを満たし、形を整える役割を担います。このジェルは体内で約6週間〜3か月かけて少しずつ吸収されます。
役割 02 / 02 ・ PCLマイクロスフィア(MICROSPHERES)
ジェルが吸収される間、周囲の組織を刺激して線維芽細胞がコラーゲンを作るよう促します。新たに生じたコラーゲンはマイクロスフィアの間に定着し、マイクロスフィア自体は時間の経過とともに加水分解され、最終的に二酸化炭素と水に分解されます。
ジェルが抜けていったあとの場所で、マイクロスフィアがいわば土台の役割を果たし、その周囲に自身のコラーゲンが定着すると考えると分かりやすいと思います。

ヒアルロン酸フィラーとエランセの経過を簡略化したイメージ図です。層の厚さやマイクロスフィアの大きさ、時期は実際とは異なり、経過には個人差があります。どちらの素材も時間の経過とともに徐々に吸収・分解されます。図中の大きさは持続期間を比較したものではありません。
エランセは、最初のジェルが吸収される間に、その場所へ自身のコラーゲンが定着するよう促す方式です。
4. 時間の経過による変化も異なって現れます
ヒアルロン酸フィラーは、注入したジェルがそのままボリュームになるため、直後の状態がその後の経過を見極める基準になります。その後はジェルが吸収される速度に応じて、少しずつ変化していきます。
エランセは少し異なります。注入直後はジェルが形を整えますが、その後の数週間から数か月間は、ジェルが吸収される過程とコラーゲンが作られる過程が重なって進行します。コラーゲンが生成される度合いは年齢や皮膚の厚さ、健康状態などによって人それぞれ異なるため、同じ量を使用しても経過が同じように現れるとは限りません。
こうした理由から、学術資料でも、エランセは初めから過剰に満たす「過矯正」は必要ないと説明されており、皮膚や皮下組織が薄い部位では特に注意するよう勧められています。注入する量と範囲は、こうした点を併せて考慮し、診療の中で決めていきます。
持続期間も一つの数字でお伝えするのは難しいです。エランセは、マイクロスフィアが分解される期間によっていくつかの種類に分かれており、同じ製品でも部位や個人のコラーゲン反応によって経過は異なります。また、エランセも永久的な素材ではないため、マイクロスフィアが分解され時間が経つにつれ、効果は徐々に薄れていくことがあります。
直後の様子だけで判断はしません エランセは、直後の状態と数週間後、その後の状態が同じとは限りません。施術直後だけを見て結果を断定するのではなく、一定期間の経過をあわせて確認することが大切です。
5. 分解酵素で溶かせるかどうかも異なります
ヒアルロン酸フィラーはヒアルロニダーゼで溶かすことができます。一方エランセは、ヒアルロン酸ではない成分で構成されているため、ヒアルロニダーゼで溶かすことはできません。その後に生じたコラーゲンも、ご自身の組織の一部となります。
そのため、エランセは注入する部位・深さ・量を施術前に十分確認することが大切です。エランセは真皮のような浅い層ではなく、皮下層や骨膜の上の深い層に注入します。浅く入れすぎたり、一か所に多く集中させたりすると、触れてわかるしこり(結節)ができることがあるため注意が必要です。
同じ理由から、唇や眉間、そして上まぶた・目の下など目の周りは、エランセを推奨しない部位です。皮膚が薄く、その下の脂肪層も少ないため、透けて見えたりしこりができたりするリスクがあるからです。こうした部位では、別の方法を検討します。
どこにどれだけ入れるかより、今のお顔に合った方法かどうかをまず確認します。
6. 同じほうれい線でも、原因から分けて考えます
エランセやフィラーを検討される理由としてよく挙がるのが、ほうれい線です。ところが、同じほうれい線でも深く見える理由は人によって異なります。大きく分けると次のとおりです。
原因 01 / 03 ・ ボリュームの減少(VOLUME)
頬の前側やほうれい線の周辺のボリュームが減り、くぼんだ影ができている場合です。この場合は、エランセやフィラーのようにボリュームを補う注入施術を検討できます。
原因 02 / 03 ・ 皮膚に定着したライン状のしわ(LINE)
長い年月にわたって繰り返し折れ込み、皮膚そのものに線が定着してしまった場合です。ボリュームを満たしても線だけが別に残って見えることがあるため、ジュベルックによる自家真皮再生術のように、ライン状のしわそのものを対象とする方法を別途検討します。
原因 03 / 03 ・ 中顔面のたるみ(SAGGING)
中顔面の組織が下がってくることで、ほうれい線の上側が重たくなり、しわがより目立つ場合です。この場合は、満たす施術よりも、糸リフトやリフティング機器のようにたるみにアプローチする方法を先に検討することもあります。
実際の顔では、この3つが同時に現れることも多く、骨格や表情のクセが影響している場合もあります。そのため、ほうれい線でお悩みの場合でも、ほうれい線の線だけを切り離して見ることはありません。ボリューム・線状のしわ・たるみを区別したうえで、何から先に対処するかの優先順位を決めます。
施術を重ねることよりも、今のお顔で何を先に見るべきかを見分けることの方が大切だと考えています。
7. ひと目でわかるエランセとヒアルロン酸フィラー
どちらが優れているかの比較ではなく、成分と仕組みがどのように異なるのかを並べた表です。
区分 | ヒアルロン酸フィラー | エランセ |
主成分 | ヒアルロン酸(加工したジェル) | CMCジェル 約70% + PCLマイクロスフィア 約30%(体積比) |
ボリュームを作るもの | 注入したジェル | 初期はジェル、その後はマイクロスフィア周囲に形成されるコラーゲン |
時間が経つと | ジェルが少しずつ分解・吸収 | ジェルは約6週間〜3か月かけて吸収され、マイクロスフィアはその後、少しずつ加水分解される |
分解酵素 | ヒアルロニダーゼで分解可能 | ヒアルロニダーゼでは分解されない |
注入する層 | 部位や目的によりさまざま | 皮下層または骨膜の上の深い層 |
唇・眉間・目の周り | 製品と部位によって検討 | 推奨しない |
エランセの成分比率・吸収時期・注入層・推奨しない部位は、学術資料(de Melo ほか、2017 ・ Christen・Vercesi、2020)をもとに整理したものです。成分や仕組みの一般的な違いであり、優劣や持続期間の長短を示すものではありません。どちらの素材も時間が経つと吸収・分解されます。実際の適用は、個人の状態によって異なります。
8. 施術の前後にご留意いただきたいこと
エランセも、針やカニューレを皮膚の中に入れて行う注射治療です。施術後は個人差がありますが、腫れ、あざ(内出血)、赤み、痛み、または押したときの痛みが現れることがあります。多くは時間の経過とともに落ち着きますが、程度や期間には差があります。
こうした反応は、すぐにお知らせください まれに、触れて分かるしこり(結節)、炎症、感染が生じることがあります。また、まれではありますが、すべての注入施術と同様に、血管が詰まったり圧迫されたりして皮膚壊死などの重篤な合併症が起こる可能性もあります。施術部位の痛みが強くなる、皮膚の色が変わる、痛みが続く場合は、速やかに医療機関へご連絡ください。施術からかなり時間が経ってから、異物反応によるしこりが生じた事例も報告されています。
カウンセリングの際に必ずお伝えください 自己免疫疾患、妊娠中・授乳中、高用量のステロイド服用、コントロールされていない糖尿病やメタボリックシンドローム、血液凝固障害がある場合、または施術部位に炎症・感染・ヘルペスがある場合は、施術を行わない、または延期する必要がある場合があります。抗凝固薬など現在服用中のお薬や、以前に受けたフィラーの成分・時期も、覚えている範囲でお知らせいただけると診療の助けになります。
注入直後のケアやマッサージの有無、その後の管理方法は部位によって異なるため、施術当日に別途ご案内します。施術後数日間は、過度の飲酒、サウナ・チムジルバン(韓国式サウナ)、激しい運動を避けるようご案内しています。
よくあるご質問
Q. エランセもフィラーなのですか?
広く見ると、皮膚の下に注入してくぼんだ部分やしわを補う素材という点で、フィラーに分類されます。ただ、一般に「フィラー」と呼ばれるヒアルロン酸フィラーとは成分が異なり、最初のジェルが吸収される間にマイクロスフィアの周囲にコラーゲンが定着するよう促す点で、仕組みが異なります。
Q. ジュベルックもコラーゲンと関係があると聞きますが、エランセとはどう違うのですか?
ジュベルックによる自家真皮再生術は、皮膚の内側で癒着した組織を剥離し、その空間にごく微量のヒアルロン酸を注入してコラーゲン生成を促す方法です。主に皮膚に定着した線状のしわそのものを対象とします。エランセは、くぼんだ部位の皮下層より深い層に注入し、ジェルが吸収される間にマイクロスフィアの周囲にコラーゲンが定着するよう促します。同じほうれい線でも、線状のしわが問題なのか、ボリュームが問題なのかによって、検討の仕方が異なります。
Q. ほうれい線にはエランセとフィラーのどちらが合っていますか?
まず、ほうれい線が深く見える原因を分けて考えます。ボリュームが減ってできたくぼみの影が主な原因であれば、エランセやフィラーのような注入施術を検討できます。一方、皮膚に定着した線状のしわや中顔面のたるみが併存している場合は、別の方法を先に、あるいは併せて検討することもあります。どの方法が適しているかは、お顔を直接確認したうえで判断します。
Q. エランセを推奨しない部位はありますか?
唇や眉間、そして上まぶた・目の下など目の周りは、皮膚が薄く、その下の脂肪層も少ないため推奨していません。エランセは皮下層や骨膜の上の深い層に注入する素材のため、浅く入ってしまうと透けて見えたりしこりが生じたりすることがあるからです。
施術より先に確認すること
エランセかフィラーかより
今のお顔の変化をまず見ます
・ しわの形態 ― 表情を作ったときだけ現れるのか、無表情でも残るのか
・ ボリュームの変化 ― 頬の前側・頬の側面・こめかみなど、くぼみの位置
・ たるみの方向 ― 中顔面から口元・顎のラインへとつながっているか
・ 皮膚の厚みと弾力 ― 注入の深さと量を決める基準
・ これまでの施術歴 ― フィラーや糸リフトなど、以前の施術の種類と時期
・ 希望する変化 ― 残したいお顔の特徴
サムスンBNS医院では、カウンセリングはカウンセリング室長よりも院長が先に担当し、お顔を直接確認したうえで、施術の有無と方法をご一緒に決めます。

サムスンBNS医院 院長 パク・ソヒョン
エランセで迷っていらっしゃるなら
施術から決めなくても大丈夫です。
くぼんだボリュームが原因なのか、皮膚に残った線が原因なのか、組織が下がったことが原因なのかによって、同じお悩みでも見方が変わってきます。そのため、ご相談は今のお顔を確認することから始めます。
しわやボリューム、皮膚の厚みとたるみの方向をあわせて確認したうえで、エランセやフィラーを含め、現在の状態で検討できる方法をご説明します。
相談・予約のご案内
ご相談のお申し込み | サムスンBNS医院 公式相談申込フォーム パク・ソヒョン院長宛にご相談のお申し込みができます。 |
電話 | 02-501-4341 診療時間は曜日によって異なる場合がありますので、ご来院前にお電話でご確認ください。 |
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※ 本記事は、医療機関の開設者が医療情報の提供を目的として作成したもので、特定の治療効果を保証するものではありません。
※ エランセやヒアルロン酸フィラーなどの注入施術後には、施術の種類や個人の状態によって、腫れ、あざ、赤み、痛み、しこり(結節)、炎症、感染、左右差などの副反応が生じることがあります。また、まれに血管の閉塞や圧迫による皮膚壊死などの合併症、アレルギー反応、遅れて現れる異物反応が生じる可能性もあります。
※ 本文であわせて触れたジュベルックによる自家真皮再生術の後には、あざ、腫れ、赤み(個人差により1〜2か月続く場合があります)、一時的な凹凸感、炎症・感染、まれに血管の閉塞・圧迫による合併症、しこり(結節)、壊死、アレルギー反応が生じることがあります。糸リフト後には、あざ、腫れ、痛み、異物感、糸の移動・断裂、左右差が、リフティング機器による施術後には、一時的なズキズキとした痛み、腫れ、あざ、赤み、まれにやけどなどが生じることがあります。
※ エランセの成分比率・吸収時期・注入層・推奨しない部位は、学術資料をもとに整理した一般的な情報であり、実際の経過や持続期間は、個人の皮膚の状態や施術部位によって異なります。
※ メイン画像と断面図は理解を助けるために簡略化した説明用の図であり、実際の製品や組織、施術結果を示すものではありません。
※ 医療スタッフと十分にご相談・診察を重ねたうえで、個人の状態に適した施術の有無と範囲を決めていただく必要があります。